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マテリアル インテグレーション 1999年1月号

マテリアル インテグレーション 1999年1月号

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特集 InterMaterial

巻頭言
“特集号のねらい”
 インターマテリアルとは,金属,無機,有機,半導体材料を同一種材料或いは異種材料間で複合化・融合化し,今までとは全く異なる構造・機能を付与した高次機能材料,或いは材料機能を単一機能から複合機能へと変革した高次機能調和材料を意味しています.
 前者の今までの材料とは全く異なる高次機能が付与されたインターマテリアルは,金属・無機・有機材料を原子・分子・ナノレベルで融合化することにより実現できると考えられています.この全く新しい高次機能材料の研究は,従来材料の枠を突破した新しい材料科学の構築とそれを基礎にした新産業の育成を最終目標にしています.この様な新材料を創成するためには,言うまでもなく原子・分子レベルから新物質を創成する新しいプロセスの開発が重要で,高機能薄膜材料をイメージしたシーズ指向の研究に分類できます.しかし,この様な基礎研究においても,研究の高効率化を達成するためにはMaterials Integrationを意識した研究が必要なことは言うまでもありません.
 一方,高次機能調和型インターマテリアルは,現在我々人類が直面しているエネルギー問題,地球環境問題,人口高齢化問題の解決に関して特に重要な役割を果たすと期待されます.この多機能調和型インターマテリアルを実現するためには,相手材料の弱点を飛躍的に改善しながら一方ではその優れた機能の更なる向上を可能にする,ミクロからナノレベルでの構造制御で特異な複合構造や界面制御構造を実現する必要があります.この材料分野の研究は,特定の目的を達成するためのシステムに必要な複合機能を想定し,それを1つの材料内に如何に組み込むかを考えながらの材料研究(Materials Integration Research)であり,目的が明確なニーズ指向の研究に分類できます.
 この高次機能調和型インターマテリアルは,主にバルク材料を目標とし,構造制御に関してはマクロからミクロ,ミクロからナノ,ナノから分子・原子レベルへと展開され、それに伴い研究内容は,現存材料の機能拡張から,構造材料と機能材料の融合へと移行すると考えられます.なお,この分野の研究も最終的には,現在人工格子法でしか達成できないと考えられてきた原子・分子レベルで構造制御した全く新しい機能を持つ材料を、バルク材として実現する方向へと研究が移行するはずです.これが達成できた時点で両インターマテリアルの構造制御は同一レベルになり,両者の合致は金属・無機・有機材料の枠を超える新しい材料科学の構築と、それを基礎にした新産業育成をもたらすと考えられます.
 本特集号は,この2種類のインターマテリアルの中で後者,即ちミクロからナノレベルの構造制御に強く関係している高次機能調和材料についての特集号です.この多機能調和型インターマテリアルを最初に取り上げた理由は,このような材料はMaterials Integrationを強く意識することにより始めて実現可能で,本月刊誌の目的とかなり合致すると考えられるからです.また,日本のおかれている現状を考えると,今後の産業戦略に確実に組み込むことが可能な材料が,現在最も必要とされているはずであり,またこの様な立場での展開がより多くの情報を読者に提供可能であると判断したからです.この様な考え方に対して,また本特集号の内容に関して読者の皆様から忌憚のない意見を頂けると幸いです.
 なお,この特集号で取り上げた材料は,"New Interactive Clever Engineered Materials","Surface and Interphase Engineered Materials","Human Related Engineered Materials"に分類でき,今後もこの分類に基づくInterMaterial 特集号を組みたいと考えています.

1.Rationality of This Special Issueインターマテリアルへの期待!
大阪大学産業科学研究所 新原 皓一
■要約
インターマテリアル(InterMaterial)と言う学術用語は,1995年に大阪大学産業科学研究所に新規に設置された,新しい材料を研究するためのセンターの名前として始めて使用された.この新しい概念にもとづく材料の研究を推進するために,同研究センターには,ナノ粒子配列制御,分子配列制御,原子配列制御,計算科学の4研究分野が設置されている.ここでは,インターマテリアルに込められた材料研究の意味と夢,材料設計指針,最近の成果を前述の研究分野の中からナノ粒子配列制御と原子配列制御に焦点を絞って紹介する.

2.New Interactive Clever Engineered Materials高次に機能が調和したマシナブルな窒化ケイ素系セラミックスの設計・開発
大阪大学産業科学研究所 新原 晧一、楠瀬 尚史
■要約
窒化ケイ素(Si3N4),炭化ケイ素(SiC),アルミナ(Al2O3),ジルコニア(Zr2O2)に代表されるエンジニアリングセラミックス(エンセラ)は,高強度,高耐熱性,軽量といった優れた特性を有し,既に自動車産業を含む多くの工業分野で実用化されている.著者らは数年前から,金属材料に匹敵する耐熱衝撃破壊抵抗性や機械加工性(快削性)をセラミックス材料に付与する研究を進めてきている.ここでは,窒化ケイ素系セラミックスが有する優れた機械的特性・耐熱性・耐食性を失うことなく,可能ならそれらの特性を更に改善しながら,同時に優れた耐熱衝撃破壊抵抗性と快削性を付与することを目的とした著者らの研究の一端を,基本的な材料設計指針を含めて紹介する.

2.New Interactive Clever Engineered Materials損傷許容性に優れた窒化ケイ素積層セラミックス
石川島播磨重工業(株)技術研究所 茂垣 康弘、宮原 薫、佐々 正
■要約
セラミックスの靭性の向上に関し,粒子の形態,大きさおよび粒界に代表される微構造を制御し,亀裂進展の制御を行う研究で,そして層状,繊維状等のマクロな構造を制御し,亀裂進展と材料構造の関係を扱う研究である.この中で,マクロな構造制御である積層構造は,靭性向上を目指して多くの材料系で研究が行われている.セラミックス積層材料は,粉体を基本としたモノリシック焼結材料と同じ製造プロセスが適用可能であること,および基本的にすべての材料系に適用できること等多くの利点がある.ここでは,構造セラミックスの積層構造制御について,筆者らの研究を中心に紹介する.

3.Surface and Interphase Engineered Materialsコストパフォーマンスに優れた鋳造による金属セラミックスの複合材料
大阪大学産業科学研究所 菅沼 克昭
■要約
鋳造は,金属製品を製造する基本プロセスであり,最も安価に物を提供できるので,粉末冶金法と比較して格段に実用化がし易い特徴を持つ.自動車やエレクトロニクス機器に代表されるように,究極のコストパフォーマンスを追及し世界をリードする我が国の産業構造には,ピッタリとフィットする製造プロセスと言える.ここでは,本格的実用化が開始されたアルミニウムベースの複合材に関し,複合化の原点,即ちなぜ複合化が必要なのかの理由付けから始め,素材とプロセスの選択,実用化の順に述べていく.

3.Surface and Interphase Engineered Materialsチタニアナノチューブの合成
中部電力(株)技術研究所 春日 智子
■要約
電池・機能材料G酸化チタン(TiO2)は,光触媒活性に優れた材料として広く知られ,NOxの除去,汚損物質の分解,水の浄化などの環境浄化や水素製造など様々な触媒反応が検討されてきた.これまでにTiO2について,チューブ化による新機能性発現等を目指した研究も一部進められている.筆者らは,化学処理法により,テンプレート,レプリカ法では得られない,微細なナノメータサイズのTiO2のナノチューブを容易に作製できることを見いだした.ここでは,これらの研究を中心に報告する.

3.Surface and Interphase Engineered Materialsポーラス金属の創製と応用
大阪大学産業科学研究所 中嶋 英雄
■要約
金属を高圧ガス(水素や酸素)中で溶解し,一方向凝固させると,孔の向きのそろったポーラス金属を作製することができる.孔のサイズは直径1μmから10mmの大きさで,孔の占有率は最大80%程度である.ポーラス金属はポーラスガラスやセラミックスと異なり通常の金属と同様の機械的加工や合金化による高強度化が可能であり,電気伝導性・熱伝導性に優れているので,今後,自動車などの輸送体の軽量化,燃料電池の電極材料,フィルター,LSIの放熱板,防震・防音材料などへの広範な用途が期待される.ここでは,そのポーラス金属の作製と応用を説明する.

4.Human Related Engineered Materialsフレンドリ・マテリアル-触って暖かく感じる材料の設計-
大阪大学産業科学研究所 西嶋 茂宏、新原 晧一
■要約
材料の高性能化を目指した材料開発はめざましいものがあるが,このような材料がもたらす環境への負荷の増大や人間生活との不調和が見られるようになってきた.また機能を中心とした(材料に囲まれた)生活では,人に精神的ストレスが生じる.人間の生活の質(QOL:quality of life)向上を実現する手段の一つとして,人の感覚に訴え,生活に潤いを与え,精神的な豊かさを与える材料の開発が考えられる.社会的ストレスを解消し人間性を取り戻すための場に必要な材料,快適環境を創り出す材料であり,これをフレンドリ・マテリアルと呼んでいる.「人の感覚に訴える」機能の研究は,感性工学とか快適科学として最終的な製品を設計する手法として確立されつつあり,また材料を対象としてもその重要性が認識され始めている.ここでは,「人の感覚に訴える」機能を有する材料を設計・製作が可能かどうかを, 触って「暖かく感じる」材料を例に取り,その手法について説明する.

4.Human Related Engineered Materials新しい無機・有機系融合材料
新日本製鐵(株)技術開発本部 片山 真吾、山田 紀子、吉永 郁子
■要約
インターマテリアルの一例として,無機材料と有機材料を融合してそれぞれの機能を複合化することを狙った無機・有機ハイブリッドが挙げられる.無機・有機ハイブリッドは,従来の無機材料と有機材料から成る複合材料とは異なり,無機物と有機物を分子レベルで融合させながら構造制御したものである.ゾル・ゲル法は,熱に弱い有機物をセラミックスやガラスのような無機物とハイブリッド化するための有望な手段の1つであり,これを応用して合成された無機・有機ハイブリッドは,ORMOSILs(Organically Modified Silicates)やCeramersと呼ばれて1985年頃から研究が始まっている.筆者らは,ゾル・ゲル法によるセラミックス合成のみならず,数年前から無機・有機ハイブリッドの合成について研究を行ってきた.ここでは,無機・有機ハイブリッドの合成および力学的,光学的特性を紹介する.
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