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マテリアル インテグレーション 2007年5月号

マテリアル インテグレーション 2007年5月号

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特集 知の創造から知の活用へ-北大創成科学共同研究機構

ごあいさつ---北海道の未来にむかって
北海道大学創成科学共同研究機構 機構長 長田 義仁

北海道大学の北キャンパス約30ヘクタールの広大な敷地には北海道大学の研究施設(創成科学共同研究機構,電子科学研究所附属ナノテクノロジー研究センター,触媒化学研究センター,先端生命科学研究院),科学技術振興機構・研究成果活用プラザ北海道,道立試験研究機関(工業試験場,地質研究所,環境科学研究センター),北海道産学官協働センターなどが立地し,「知」の一大集積地を形成しています.創成科学共同研究機構は「新たな学問領域の創成」と「部局横断的な研究の推進」を図ることを目的として平成14年に設立いたしました.

これまでの大学では,学部や研究者毎にどちらかというと閉鎖的な研究がされていたり,地域や企業との連携が不十分などいくつかの課題がありました.それではこれからの複雑に絡み合う環境などの問題や社会の要請に応えることができません.これからの大学は,トップダウンによる迅速な意思決定,時代のニーズに対応した複合・融合学問の創設,地域や社会との連携強化を図っていく必要があります.

北海道大学では,これらの課題・要請に応えるため,様々な対応・組織改革を行ってきました.その一つとして,大学にて創造された「知」を積極的に活用し経済や地域社会に貢献することを目的に,創成科学共同研究機構は創られました.創成科学共同研究機構では,従来の研究科,研究所,研究センター等の枠組みから離れて,異分野の研究者を学内外から公募し,専用の研究室や予算を用意し,独創的な研究を推進しております.

その成果・理念が評価され,当機構を拠点とした「北大リサーチ\& ビジネスパーク構想」は平成15年度文部科学省科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プログラムに採択され,平成17年度には,文部科学省による中間評価の結果,最高評価である「A」を獲得することができました.この「北大リサーチ\& ビジネスパーク構想」では,北海道の地域性を活かした戦略重点プロジェクト研究部門として「人獣共通感染症の診断・治療法の開発」,「移植医療・組織工学」,「食の安全・安定供給」,「環境・科学技術政策」の4つのプロジェクトを立ち上げ,全国から採用された専属の研究スタッフにより,目的達成型プロジェクトとして研究が推進されております.また企業出身者からなる戦略スタッフ部門により,北大で生み出された研究成果をスムーズに事業化できるよう,ビジネスモデルやパテントマップ構築,研究成果のデータベース化等により,研究者を支え,「知の活用」をサポートしています.

これからも創成科学共同研究機構は,北海道大学の先駆的研究拠点として,また,大学の成果を事業化・産業化につなげる地域貢献の拠点として,精力的な活動を行ってまいります.

本特集号はその活動成果の一端を紹介するものです.次代を担う研究者の最新の研究が載っておりますので,皆様ぜひご覧下さい.

創成科学共同研究機構の果たす役割
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 研究企画部長 渡部重十

■要約
21世紀に入り,科学技術の急速な進展と社会の多様化・複雑化はますます加速している現状です.社会が必要とする研究が多様で複合的になると,これに対応

して従来と異なった新しい学問領域をつくる必要があります.北海道大学では,既存の研究分野を超えて新しい学問領域を創成し,そこから生まれる独創的な研究成果を広く世界に発信し,社会へ還元していくべきと考えました.この考えをもとに,独創的な研究を実施するため,研究者個人の独創力や展開力を基本にしながら,大学としてシステム面からの対応を考え,創成科学共同研究機構が平成14年に設置されました.その使命は,超学問領域(Trans-disciplinary Research)の創成とその独創的な研究成果を世界へ向けて発信する事にあります.


計算科学:見えないものを観る
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 特定研究部門 寺倉 清之

■要約
私が北大の創成科学共同研究機構に着任したのは,2003年8月です.着任した年の12月から,北大における計算科学の振興を目指して,Hokudai Simulation Salon (HSS) の設立に取り掛かりました.北大全学の関係する研究者に呼びかけ,数十名の参加者を得ることができました.このときの呼びかけの文章は,計算科学の意義をかなり明確に述べていると思うので,その主要部分をここに再録します.


生物機能マテリアル:海からの贈り物を活かす
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 特定研究部門 松田 篤 他

■要約
本研究室では,カニ由来のキトサンを使った神経再生材料の開発,魚のウロコからコラーゲンを取り出し,組織再生材料への利用可能性を探る研究プロジェクトを産・学・官連携で行っています.具体的には,キトサンは経済産業局:平成17年度 地域新生コンソーシアム研究開発事業(地域コンソ),コラーゲンは科学技術振興機構:平成17年度 独創モデル化事業および平成18年度シーズイノベーション化事業です.キトサンを使った神経再生材料から述べます.


神経細胞の発達と細胞周期を制御する新規タンパク質ファミリー
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 松岡 一郎

■要約
我々は末梢交感神経細胞の分化と神経栄養因子応答性変化の解析を通じて,神経細胞の細胞周期制御に関わる新しいタンパク質,BRINPファミリーを発見しました.この小論では北海道大学創成科学共同研究機構での研究活動を通じて明らかになったBRINPファミリータンパク質の働きを中心に,神経細胞の分化・細胞周期制御と機能発現について紹介します.


海の汚染をホヤに聞こう-ホヤの遺伝子発現を指標にした海洋汚染化学物質の影響評価系の開発-
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 安住 薫

■要約
私たちは,海産動物ホヤの全遺伝子の約7割を検出できる大規模なDNAマイクロアレイを作製し,様々なホヤサンプルを用いて遺伝子発現の網羅的な解析を行ってきました.最近,DNAマイクロアレイを用いて海洋汚染化学物質がホヤに与える生物学的影響を評価するユニークな方法を開発することができましたので,以下に紹介します.


ハイパーブランチ糖鎖高分子の合成と特性
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 佐藤 敏文

■要約
本稿では,天然糖類から誘導した無水糖および二無水糖を用いた多分岐糖鎖高分子(ハイパーブランチ糖鎖高分子)の合成とその特性について紹介します.


分子性材料の伝導性を場所ごとに光で変える新しい接合子構造作製法を目指して
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 内藤 俊雄

■要約
本稿で登場する物質は,主に有機分子や金属錯体からなる結晶性固体です.これらと共通の特徴を持つ物質・材料は,我々の周囲にいくらでもあり,通常大雑把なイメージとして“有機物”といわれているものに,ほぼ一致します.そのほとんどは電気も流さず,磁石にも付きません.その理由は磁性や伝導性に必要な不対電子が,通常こうした分子性材料中には安定に存在しないからです.従って,分子性材料が半導体部品などの電子材料として活用された例は,かなり例外的です.一方,分子性材料の強みは色々な分子を組み合わせたり,更には分子のある一部分だけを変えたりしながら,詳細に設計できる点にあります.この多様性と設計可能性が,分子性材料の発展の一つの要因だと言えるでしょう.伝導性の分子性材料に関しても,1-10K程度の極低温ではありますが,超伝導や強磁性の他,単体金属など他の伝導性・磁性物質とは一味違うユニークな電気・磁気特性が多数発見されました.本稿ではその次の段階として,こうしたユニークな物性を半導体デバイスなどとして生かすための研究について,一例をご紹介させていただきたいと思います.


トポロジーを視点とした光物性計測
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 戸田泰則 他

■要約
物質の多様性を統一的に理解しようとする試みは,物性物理学における大きな課題のひとつです.また物質の多様性は,根本をたどると電子の持つ性質の多様性であり,電子のポテンシャルを担う原子核や素粒子の多様性を反映しています.さらに物質を生命や宇宙の構成要素と見なすと,物理学全般の多様性につながることがわかります.この多様性を分類する概念のひとつとして,「トポロジー」の考え方が使われるようになってきました.トポロジーは「もののつながり方に普遍的な概念」であり,もともと数学(位相幾何学)の用語ですが,現在では非常に広い分野で扱われるようになってきました.一方で物性に対するトポロジーの視点に立ったアプローチはまだまだ各論的ですが,様々な物質でトポロジーの概念の有効性が示されています.またトポロジーを特徴とする物質群も見い出され,これらの物質ではトポロジーにもとづく新たな物質機能を創り出す可能性を秘めています.ここでは光を使ったトポロジー物性計測に向けた我々の取り組みを紹介したいと思います.


有機農業への新アプローチ
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 信濃 卓郎 他

■要約
有機物は化学肥料が多用される近代農業以前には肥料として活用されてきましたが,その問題点として植物が利用できる形態である可溶性の無機物となるのに時間がかかり,そのために化学肥料と同程度の効果を期待するためにはより多くの資材を投入する必要があるということがあげられます.いかに効率的に投入した有機物を植物に利用させることが可能か?そこに新たな技術の可能性があると考えています.


アメーバに学ぶ経路探索の方法
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 手老 篤史 他

■要約
いくつもの都市を結ぶ交通網や通信網など,物や情報を流通させるネットワーク問題は人々の生活に深く関係のある重要な問題です.だがこれらの問題は重要でありながら,計算時間の爆発という理由により実際に解く場合にはとても難しい問題となっています.さて,このようなネットワークトポロジー問題をたった1つの単細胞生物がいとも容易く解いていると聞けば,皆さんはどのように感じるでしょうか?ここでは最もシンプルなネットワークトポロジー問題の例として,ある単細胞生物が2点間を結ぶ最適ネットワークを見つける方法と結果を紹介します.


植物の受精・発生の解析:植物育種学への応用に向けて
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 星野洋一郎 他

■要約
現在,私達は生殖細胞の単離と受精・胚発生の研究に加え,植物の生殖器官である「花」ができるメカニズムの解析,植物バイオテクノロジーを育種に役立てるための培養系の開発などいくつかの側面からこの課題に取り組んでいます.また,重複受精の産物である胚乳を培養し,植物体に再生させる技術の開発を行っています.これは,2倍体の植物が3倍性の胚乳を形成させることに着目し,2倍体の植物から直接3倍体を育成するもので,新しい倍数性育種の可能性を提示するとともに,重複受精の産物であり,栄養貯蔵器官としての機能を持つ胚乳がどのように発生過程で分化するのかを探る研究に応用できるものであると考え,解析を進めています.


ライフサイエンスにおける自己組織化技術:自己組織化パターン表面と細胞の相互作用
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 流動研究部門 山本 貞明 他

■要約
我々は,これまで,自己組織化による微細加工の研究を行ってきました.その結果,高分子溶液のキャストプロセスにおける自己組織化現象を利用して,ハニカムパターンやラインパターンなどの規則構造をもった高分子フィルムを製造する方法を見出しました.そして,これらのパターン化フィルム上で細胞がどのように行動するのか,そして,それはどの様な機構によるのか,つまり細胞と自己組織化によって作った規則構造を持ったフィルム間の相互作用について研究してきました.現在,その知見に基づき,ハニカムフィルムを用いた治療法開発や医療デバイス開発に関する研究も展開しています.ここではハニカムフィルムとラインパターンフィルムの製造方法,それらフィルムによる細胞挙動の制御とそのメカニズム解明に関する最近の研究結果について紹介します.


カーボンナノチューブを用いたバイオセンサ
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 戦略重点プロジェクト研究部門 武笠 幸一 他

■要約
私たちのプロジェクトは,北海道大学獣医学研究科で行われてきた人獣共通感染症,特にインフルエンザの発生・伝播メカニズムの研究蓄積を基に,ナノテク等の先端技術との融合をはかり,診断用チップや治療法の実用化を目標としています. バイオとナノの融合による新たな病原性微生物検出システムの研究開発を行っていますが,その基盤として分子間相互作用検出装置を用いて病原性の仕組み・原因を解析し,得られた知見にもとづいて予防・治療薬の開発を行い,企業化への展開を図りたいと考えています. この様にナノテクとバイオの融合を実現しようということで私達の研究はスタートしました.脅威の新素材と言われているカーボンナノチューブ (CNT) を用いたセンサーでインフルエンザ・ウイルスを検出できる商品を世の中に送り出したいと考えています.


ゲルの衝突と破壊:柔軟さと丈夫さ
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 戦略重点プロジェクト研究部門 田中 良巳

■要約
本稿では,ゲルの力学的特徴に関する最近の知見について紹介します.実は,ゲルの力学物性については,高分子科学の分野においてすでに長い間研究がなされてきました.しかし,その殆どが,(大変形状態も含めた広い変形領域での)静的な弾性的性質を調べる引っ張り(あるいは圧縮)試験か,微少変形での振動試験(振動周波数と硬さの関係を調べる)に関するものです.しかし,ゲルを材料として応用しようとすると,そのような試験法だけでは,明らかに不十分です.たとえば,金属やプラスチックなどの材料を評価する場合,上で述べたような基礎的な試験に加え,摩擦,衝突,破壊(あるいは,その複合的現象としての磨耗や削れ)などについて,詳細な試験が行われます.実際的な状況下では,材料はそうした過酷な環境下で用いられるからです.「ゲルなんてそもそも軟弱な物質だから,そんなことを調べたって無意味だ」と,いう意見があるかもしれません.しかし,ゴムに匹敵する強度をもつゲルはすでに開発されており,構造材料してのゲルの応用は実現一歩手前の段階まで来ています.以下では,ゲルの衝突において見られる特異な現象,及び比較的最近創り出された超高強度ゲルについて述べます.


根圏の力:根のまわりを科学する
■著者
北海道大学創成科学共同研究機構 戦略重点プロジェクト研究部門 和崎 淳 他

■要約
筆者らは,根圏研究を中心に担当しています.本稿では,本プロジェクトの大目標の一つである環境低負荷型の次世代農業を実現する上で,なぜ根圏の機能が重要なのかについて,科学的に興味深い知見を含めて概説します.


連載
第二次世界大戦後の日本のセラミックス科学の発達に友好と親善に尽力した世界の大学教授と科学者(29)Rate Controlled Sintering という焼結技術を1965年(昭和40年)以降精力的に発表され,その他ムライト,スピネル,アルミナ,Radwaste,超伝導物質,Shock Condition,Explosive Processing などいろいろな方面の研究をされると共に,よい講義をされた研究者,教育者,大学行政者であったアメリカ North Carolina State University の Hayne Palmour 教授
■著者
宗宮 重行
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