PDF/月刊誌論文/code:pg_0301_07 マテリアル インテグレーション 2003年1月号
INTER MATERIAL セラミックスと21世紀の科学技術

高性能デバイスの開発を目指して
■著者
(独)産業技術総合研究所　セラミックス研究部門　空間機能化セラミックス研究グループ　鈴木　憲司　他

■要約
*この論文のpdfファイルは非売となっております*次世代燃料電池の開発として,固体電解質形燃料電池(SOFC)を移動用,家庭用,さらには携帯用小型電源に適用することを念頭に,SOFC の低温作動化とその構造の単純化を実現するための材料開発を行っている.これまでの低温作動化に関する成果として,燃料極のニッケル・セリア電極にルテニウムを高分散することによって,600°C でも0.8W/cm2 という極めて高い出力密度を得ることに成功した.しかも,この性能は,燃料ガスとして水素以外にメタン,エタン,プロパン等の炭化水素を使用した場合でも同様に発揮され,SOFC の特長である多様な燃料ガスへの適応性にも優れていた.また,セル構造の単純化に関しては,従来の燃料電池が燃料ガスと空気を別々に供給し発電していたのに対して,それらの混合ガス中でも発電できる新しいSOFC を考案した.このSOFC では,(1) セル構造を単純・小型化でき,(2) 電解質を薄膜化せずに電気抵抗を低減でき,(3) 燃料ガスに炭化水素を容易に使用できる特徴を持っている.この成果は,平成12 年に米国科学誌「サイエンス」に掲載され,国内外から大きな反響を受けた.また,新たな酸素導電体の合成を行っており,最近,活性酸素(O2-,O22-)を包含あるいは吸蔵するアルミノシリケートを見出した.その構造は(AlSi)O4四面体がフレームワーク状に形成されたゼオライト様構造を有し,そのフレームワーク中の空隙(4°A 程度の空間)に活性酸素が存在する.本物質はハイドロガーネットを700℃で加熱するだけで合成でき,Ca12(Al14-XSiX)O33+0.5X(0≦X≦4)の組成式で表される.結晶構造は立方晶系,格子定数:a =12.0116°A,空間群:I・3d である.Ca2+ の一部は遷移金属等の陽イオンと置換が可能であり,新たな機能付与あるいは性能向上を行うことができる.これからの研究において,酸化触媒,燃料電池又は濃淡電池用電極,イオン伝導体等への利用を目指している.