マテリアル インテグレーション 2011年8月号
特集　進化と深化をはじめた機能性食品の世界(2)

魚うろこコラーゲンの特徴とその応用
■著者
東京工業大学　理工学研究科　 教授 田中　順三

■要約
コラーゲンは,いにしえから私たちの衣食住に役立っている.人になじみ深い材料である.これまでコラーゲンは,牛・豚などの哺乳動物由来が主であるが,海綿状脳症や口蹄疫のような人獣共通感染症のリスクから,近年,魚を原料としたコラーゲンの優れた保水性,線維化能,細胞接着能などが見出されている.そのため,化粧品・再生医療の分野へ応用されはじめており,機能性食品の原料としても期待されている.本稿では,魚うろこから抽出されるコラーゲンの構造と特徴について紹介し,魚コラーゲンの機能性食品への応用について述べた.

マリンケミカル“フコキサンチン”の抗肥満・抗糖尿病作用
■著者
北海道大学大学院水産科学研究院 機能性物質化学領域・准教授 細川 雅史

■要約
Fucoxanthin, a marine carotenoid found in edible brown seaweeds, attenuates body weight and white adipose tissue (WAT) weight gain in diabetic/obese KK-Ay mice, although it does not affect these parameters in normal C57BL/6J mice. In the WAT of KK-Ay mice fed fucoxanthin, excessive mRNA expression of tumor necrosis factor-α (TNF-α), monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1) and interleukin-6 (IL-6), which are pro-inflammatory adipocytokines considered to induce insulin resistance, are markedly reduced to normal mice level. In addition, fucoxanthin suppressed development of hyperglycemia and hyperinsulinemia of KK-Ay mice. In the muscle of KK-Ay mice fed fucoxanthin, glucose transporter 4 (GLUT4) translocation to plasma membranes from cytosol is promoted. In this article, we describe anti-obesity and anti-diabetic effects of fucoxanthin.


機能性食品の現状と農業研究の取組
■著者
独立行政法人　農業・食品産業総合研究機構　東北農業研究センター 鈴木　雅博

■要約
行政では,機能性食品を「広く,健康の保持増進に資する食品として販売・利用されているもの全般」と定義している.しかしながら,行政がその機能性食品にほとんどが「いわゆる健康食品」となっている.その原因として特定保健用食品の審査の厳しさが指摘されている.農業研究においても機能性食品というの無視できない存在であり,今日では(独)農研機構で育種を手がけている作物のほとんどで,高機能性農産物が品種として登録されるようになっている.


高機能タマネギの開発と地域ブランドの構築
■著者
有限会社植物育種研究所 代表取締役 岡本　大作

■要約
タマネギの機能性に着目し,機能性成分であるケルセチンを遺伝的に多く含むオリジナル品種を開発した.単に種子を販売するのではなく,種子・栽培・加工・流通までを一貫して取り組み,特産品として地域ブランドの確立を目指した.


情報メディアとしての地域ブランド構築
■著者
須藤　秀紹

■要約
本稿では,ブランド構築に感性工学の手法を応用した例として地域資源を活用した化粧品の開発事例の一部を,またブランド価値向上に情報学的手法を応用した例として「BUSメディア」のアイディアを紹介する.


タモギタケの有効成分利用技術
■著者
株式会社スリービー 品質管理室長 冨山 隆広

■要約
当社はタモギタケの持つ保湿作用や抗アレルギー作用等といった機能性成分に着目し,北海道立林産試験場との共同研究により全国で初めて無農薬栽培による安全・安心なタモギタケ人工栽培に成功した.また,より食品機能性の高く外観や水煮の生産性に優れた新品種「エルムマッシュ291」を育成した.ここでは,これらの経緯と当社がこれらの有効成分を利用して開発した製品について述べる.


ガソリンエンジン自動車の冷却・放熱システムの現状とハイブリット自動車の場合の課題
■著者
芝浦工業大学　システム理工学部　機械制御システム学科 藤木 章

■要約
In gasoline engines, there are two important heat spread system in engines. One system consist of exhaust valve, valve seat and valve guide. The other is main heat spread system of radiator. Ordinary gasoline engine use pressurized water of max 120℃ to make compact of radiator. However, hybrid cars use IGBT transistor, and this transistor is not strong for heat, so hybrid cars have sub radiator to keep cooling water for transistor.


連載
近代日本のセラミックス産業と科学・技術の発展に尽力した偉人,怪人,異能,努力の人々(45)大真面目な,謹言実直で,頭脳明晰で,典型的な学者の一面を持ち,学生に優しく,面倒見のよい教育者であった横浜国立大学　高橋健太郎教授
■著者
宗宮 重行