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マテリアル インテグレーション 1999年2月号

マテリアル インテグレーション 1999年2月号

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特集 JFCC((財)ファインセラミックスセンター)-世界のCOEを目指して-

巻頭言
 金属材料や高分子材料にはない高強度,高硬度,高耐熱性,高耐食性,軽量性などの特性を持つファインセラミックスは,既に多くの工業分野で実用化され,或いは実用化されようとしている.この飛躍的な進歩は,1970-1980年代に進められた世界中の多くのセラミストの研究により,経済的で大量生産が可能なプロセスの開発,プロセス-微細組織-機械的特性の相関の解明による高靭化の達成,構造・破壊の評価技術や寿命予測技術の進歩,セラミックス部品の構造設計法の確立等が達成され,信頼性の高い,複雑形状の部品が,大量に安価に供給できる体制が構築されたことによる.
 この様なファインセラミックスの発展に,ファインセラミックスセンター(JFCC)は重要な役割を果たしてきた.JFCCは,セラミックスに関係している諸兄がご存じのように,セラミックスの利用・用途の拡大をはかり,関連産業の振興と日本の経済と国民の生活向上に貢献することを目的として,1985年5月に設立された.それ以来,設立当時の困難を乗り越え,試験研究,技術基盤整備,中小企業振興,普及啓蒙事,国際交流等の事業を中心にして発展してきている.
 FCC設立の源泉ともなった,1970年代に始まった新素材開発に対するフィーバーは,1990年代になると日本経済の低迷とも関連して,その開発意欲が減退してきたとの見方が一般的である.しかし,この見方はファインセラミックス材料に関しては,一方的過ぎるような気がする.その理由は,同じく1990年代になってクローズアップされてきたエネルギー問題や地球環境問題を解決するためには,ファインセラミックスの活用が不可欠であると考えられるからである.今後は更に飛躍的に特性を改善したセラミックス,並びに新機能を付与したセラミックスが求められるようになると予測され,既にこの様な社会の要請に応えることの出来るファインセラミックスが日本において発芽しようとしている.
 この様なファインセラミックスに関する状況を考えると,JFCCの役割は今後尚一層重要になってくると考えられる.この為に,本特集号ではJFCCを取り上げ,その現状と課題を紹介していただくことにした.紹介してもらう内容は,JFCCの今後の方針,知的基盤整備等に関連した事業内容,JFCCが得意とする構造・破壊の評価技術の開発状況,JFCCが今後進めようとしている材料研究等である.
 日本のおかれる経済状況は今後ますます困難になると考えられる.この様な状況に於いては,長期間にわたり多大の資金の投入が必要なファインセラミックス材料の開発研究に際しては,リスクの分散が不可欠である.JFCCはこの様な状況に対応する必要があり,また,我々もJFCCをリスク分散対象として積極的に利用する姿勢が必要である.この面でも,本特集号が読者の何らかの役に立てば幸いである.

1.世界のCOEを目指して!
世界のCOEを目指して!
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 専務理事・試験研究所長 柳田 博明

■要約
ファインセラミックスセンター(JFCC)は,セラミックスをベースとした世界に誇れるCOE(Center of Excellence)を築いた中京地区に位置している.ここでは,JFCCの目指すCOEとしての研究所の要件とはなにかについて述べる.


2.JFCCの事業状況
ファインセラミックスセンターの事業とその展開
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 所長代理 金 順一

■要約
1985年5月,ファインセラミックスセンター(JFCC)がファインセラミックス関連産業の振興を目的とした研究機関として設立された.当時の技術革新ブーム,新素材ブームのもとで通産省の新素材振興策の一環として提案された試験評価センター構想と相まって,民活事業型財団第1号として発足した.本稿では,試験研究所を中心としたJFCCの事業内容,試験研究事業動向,展開方針などについて概説する.

2.JFCCの事業状況
ファインセラミックスにおける知的基盤整
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 常務理事 松井 實

■要約
研究開発や産業活動,あるいは行政的な規制等を実施していくにあたって,その基盤として,科学技術の成果を蓄積し,体系化して社会に共通の知的資産を形成していくことは重要である.JFCCでは,通商産業省工業技術院委託による工業標準化委託調査研究「ファインセラミックスの試験・評価方法に関する基盤調査」をテクノインフラ(知的基盤整備)事業として1996年4月より実施している.この事業の中で,1998年度,名古屋大学平野眞一教授を委員長とする知的基盤検討分科会を設置し,5つの重点分野の一つにあげられた新材料の性能,安全性等に関する試験評価方法関連として,「ファインセラミックスにおける知的基盤整備のあり方」について検討した.ここでは,その概要を紹介する.

2.JFCCの事業状況
セラミックス特性データベースの開発
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 大熊 英夫

■要約
学術雑誌などに発表された情報をキーワードで検索する二次情報データベースにはCeramic Abstract, JOIS,Chemical Abstractなどがありセラミックスの研究開発には欠かせないデータベースとなっている.しかし,必要な情報は文献に書いてある中身,数値や図である.この数値に直接アクセスできるデータベースはファクトデータベースと呼ばれている.ファインセラミックスの分野ではこのような大規模なファクトデータベースはない.セラミックスの特性は組成,製法によって様々な値を取り,データが複雑になることや評価測定方法が十分定まっていないなどの理由によるためである.JFCCでは,数値データのみならず図表データも収録し,それらのデータは相互に関連付け,ファインセラミックスデータベースを構築し,Internetでの検索ができるようにした. ここでは作成したファインセラミックスのファクトデータベースの基礎部分について解説する.

2.JFCCの事業状況
JFCC標準物質 -リファシリーズ-
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 酒井 靖次

■要約
JFCCは,ファインセラミックスに関する統一的な試験評価体制の整備を中心とした技術的基盤の整備を主たる目的に試験評価,試験法の開発,標準化の研究など多様な事業活動を推進する機関として設立された.ファインセラミックス産業は創生期-発展期にあり標準化が不十分な段階では値を確定することが難しい場合が多く,標準物質は重要な意味をもつものである.ここでは,リファシリーズ(JFCC標準物質)について述べる.

3.JFCCの評価技術
セラミックスの構造・破壊評価技術
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 安富 義幸、平松 恭二、坂井田 喜久、瀧川 順庸

■要約
セラミックスは,一般に破壊中に塑性変形を起こさず,弾性変形からカタストロフィックな即時破壊が生じる.多結晶構造からなるセラミックスの機械的性質や破壊は,材質だけでなく組織を構成する結晶粒や粒子間界面などの微構造に大きく依存するのである.JFCCでは,高強度と高靭性を両立させたセラミックスを開発するために,巨視破壊の素過程である界面構造レベルの微視破壊と微構造との関係を解明することに取り組んでいる.ここでは,1)安定き裂進展挙動の直接観察手法による破壊抵抗値評価手法の開発,2)微視組織を有限要素法上に取り込み微視き裂進展挙動をシミュレーションする技術の開発,3)後方散乱電子線回折法によるき裂周りの結晶方位解析手法の開発について紹介する.

3.JFCCの評価技術
セラミックスの高速・高感度非破壊検査技術
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 水田 安俊、恩田 勝弘、池田 泰

■要約
非破壊検査によるセラミックスの品質保証は破壊試験のような応力負荷をかけずに,製品の形状・構造・材質の健全性を保証するところに特徴がある.とりわけ,内部の微細な欠陥を高速・高感度で検出し,その健全性を確証することが重要な役割であり,製品のコストに過重な負担をかけないよう,低コストで,高速・高信頼性の非破壊検査技術が求められている.ここでは,セラミックスの特徴を考慮した最適な検査方法について紹介する.

3.JFCCの評価技術
セラミックス粒界・界面の超微細構造解析技術の新しい展開 
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 菅原 義弘、斎藤智浩、鈴木 敏之、楠 美智子、平山 司、幾原 雄一

■要約
セラミックス材料の粒界や界面の原子構造・状態はその機械的特性や電気磁気的特性と密接に関係している.したがって,優れたセラミックス材料の開発や各種機能特性発現機構の解明のためには,粒界・界面の原子構造・状態を定量的に評価・解析する技術が必要となる.JFCCの微構造グループでは,グループの発足以来,各種セラミックス材料の粒界・界面の評価・解析及び新解析技法の開発を系統的に行ってきた.ここでは,微構造グループが最近行っているこの分野の研究内容について要約して紹介する.

3.JFCCの評価技術
低電子線照射量でのTEM観察によるゼオライトの構造解析
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 佐々木 優吉、鈴木 敏之、清水 わたる

■要約
ゼオライト及びその類縁化合物であるミクロポーラス材料が持つ特性の多くは,その結晶構造に依存して規則配列した細孔に深く関与している.したがって,これら細孔を直接観察することを可能とする透過型電子顕微鏡(TEM)観察は,ミクロポーラス材料の構造解析のための大変有用な手段の一つと言える.しかし,同材料が電子線照射に対して敏感であり照射損傷を受けやすいという問題がある.筆者ら研究グループは,それに対する解決手段として期待されている高感度ディジタル画像記録方式を利用した低電子線量照射条件下での高分解能TEM観察を実施し,幾つかのゼオライトの構造解析を行ってきた.ここでは,その手法について紹介すると共に,観察例の幾つかを紹介しその有効性を示す.

3.JFCCの評価技術
新しい細孔構造評価技術
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 稲田 健志、伊沢 広純

■要約
地球温暖化に対する様々な取り組みの中,温暖化ガスとして最も排出量の多いCO2ガスの削減を目的とした研究が活発に行われている.その中でも,高温排ガス中からのCO2分離技術や,エネルギー効率を高めるための有力な手段とされるガス分離精製プロセス技術において,耐熱・耐圧・耐食性に優れた無機多孔質膜が注目されている.CO2分離無機膜の細孔構造評価あるいは新規な分離膜材料の探索には,CO2分離機能を支配する直径3-10Åの細孔に関する定量的な情報が不可欠である.ここでは,極低温He吸着法の特徴に着目し,N2吸着法との間に見いだされた吸着量の差とCO2分離膜のガス分離特性関連, そしてCO2分離機構の解析の結果を紹介する.

4.JFCCの材料研究
賢材の研究
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 松原 秀彰、辛 純基、柳田 博明

■要約
材料自らが特性発現の診断や学習あるいは回復の機能をもつ材料は,“smart materials”,「インテリジェント(知的)材料」などと呼ばれ,年々関連の研究が盛んになっている.JFCCは約30の機関よりなる「賢材研究会/Ken-Material Research Consortium」の活動を通して,セラミックスを中心とした賢材の開発研究を積極的に進めている.ここでは,最近JFCCにおいて開発を進めつつあるセラミックス,複合材料の自己診断材料について,材料設計の概念や手法,自己診断性の機能,コンクリート構造物への適用などに関する研究成果のあらましを紹介する.

4.JFCCの材料研究
燃料電池用セラミックスの研究開発
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 福井 武久、大原 智、小川 光恵、ラデンカ・マリチ、向井 一夫、大川 元

■要約
省エネルギー,高効率,環境性が高いクリーンなエネルギー源として,燃料電池の研究開発が広く進められている.スペースシャトル等宇宙開発利用の小型発電システム等様々なシステムとして研究が繰り広げられている.燃料電池は,採用する電解質により,構成材料と作動温度が異なり,アルカリ型燃料電池(AFC),固体高分子型燃料電池(PEFC),リン酸型燃料電池(PAFC),溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)及び固体電解質型燃料電池(SOFC)が代表的なものである.その中で,MCFCとSOFCは高温作動のため,多くのセラミックス材料の適用が検討されており,実用化のためには材料の信頼性向上が不可欠とされている.ここでは,JFCCにおけるSOFC及びMCFCの研究成果の概要を述べる.

4.JFCCの材料研究
Si/SiO2低次元構造制御の創成研究
■著者
(財)ファインセラミックスセンター 試験研究所 石川 由加里

■要約
無害で豊富なSiO2を原料とし膨大な既存技術の蓄積を有するSiは半導体デバイス材料の中でも最も重要な地位を占めている.集積技術分野で限界がささやかれ始めたSiであるが,実は魅力的なデバイス能力が未開拓のまま残っているのである.ここでは,単結晶Si/SiO2成長を可能にした,Si分子線エピタキシー(Si-MBE)その場低エネルギー酸素イオン注入技術について解説し,また同手法を用いて制御したSi/SiO2低次元構造の中から,量子および光電子デバイス材料開拓の観点から興味深い構造を紹介する..
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