特集　非鉛系圧電材料(2)
ELECTRONIC CERAMICS 非鉛系圧電材料(2)

ドメインエンジニアリングによる非鉛系圧電材料開発の最新
■著者
山梨大学大学院 医学工学総合研究部 和田　智志

■要約
既存の無鉛圧電材料の微構造制御による圧電特性の向上という物理的なアプローチには,2つの方法が存在する.1つはセラミックスにおける配向制御技術であり,竹中らによる精力的な研究の結果,圧電特性の向上に大きく寄与することが明らかとなっている.これに対してもう一つの微構造制御の方法として期待されるのが,ドメイン制御技術(ドメインエンジニアリング)である.ここでは,ドメインエンジニアリングの無鉛圧電材料への具体的な応用を紹介するとともに,この技術によってシングルドメイン構造の単結晶で得られる圧電特性よりも遙かに高い圧電特性を導入できることを示す.


非鉛ニオブ酸塩系圧電体セラミックス薄膜
■著者
名古屋大学・エコトピア科学研究所ナノマテリアル科学研究部門 准教授 坂本　渉

■要約
本稿では,様々な非鉛系圧電体セラミックスおよびその薄膜化,薄膜の特性と応用について述べ,さらに比較的高いキュリー温度を有する強誘電体であり,優れた強誘電性および圧電性を示すため注目されているニオブ酸塩系ペロブスカイト酸化物について,筆者らが最近行ったケミカルプロセスによるK0.5Na0.5NbO3化合物の薄膜作製に関する研究例を紹介する.


マイクロ波焼結によるチタン酸バリウムの高性能化
■著者
株式会社富士セラミックス　開発部 部長 高橋　弘文 　

■要約
ここでは無鉛圧電材料としてのBaTiO3の高性能化の可能性についてドメイン制御の観点から報告する.さらに誘電率の温度依存性を検証することでマイクロ波焼結の条件の違いにより低い誘電率でも高い圧電定数d33が得られることを明らかにしたので報告する.


スクリーン印刷法による非鉛系強誘電体厚膜の作製
■著者
富山県工業技術センター加工技術課 課長 二口　友昭

■要約
スクリーン印刷法は,電子部品実装分野において,チップ型電子部品の作製,配線基板の製造および表面実装用半田ペ-ストの印刷等に,広く一般的に用いられている.スクリーン製版の上に置かれたペーストをスキージにより,開口部を通して基板に転写するものであり,厚膜形成とパターン形成が同時にできる方法であるため,低コストで材料の無駄が少なく生産性がいいという特徴がある.最近の精密スクリーン印刷機では,スキージ圧の制御やスクリ-ン製版および基板の位置の制御が精密に行われるようになり,印刷性のいいペーストを用いれば,数十μのパターンを作製することも可能である.また,細かいメッシュを使用することにより機能性有機薄膜パターンの形成も可能であり,これらを用いた薄膜素子や太陽電池への応用は,プリンタブルエレクトロニクスとして再び注目されている.ここでは,機能性無機材料の中でセンサやアクチュエータへの応用が特に期待されている非鉛系強誘電体厚膜をスクリーン印刷法により作製した例を紹介する.


結晶配向性非鉛系圧電セラミックスの微細構造制御
■著者
慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻 教授 木村　敏夫

■要約
微細構造は焼成時の粒成長過程により決まるが,非鉛系圧電セラミックの候補として挙げられているBi0.5Na0.5TiO3系と(K,Na)NbO3系の物質およびビスマス層状構造やタングステンブロンズ構造を有する物質では,焼結について教科書に述べられているものとは異なる粒成長挙動を起こす.本稿では,はじめにこれらの物質の微細構造の特徴を述べ,次に微細構造形成過程とその制御法について述べる.


ビスマス層状化合物配向セラミックスの圧電特性
■著者
株式会社村田製作所　技術・事業開発本部材料開発統括部材料1部 木村　雅彦

■要約
セラミック発振子やハイパワーデバイスへの応用を念頭においた配向セラミックスの研究はこれまでほとんど行われていない.そこで我々は,ビスマス層状化合物をセラミック発振子,または,ハイパワーデバイス用の材料と位置付け,配向化によって関連する特性がどのように変化するかを調査した.その結果,ビスマス層状化合物の配向セラミックスで,PZTを凌ぐ,優れた特性が実現可能であることを見出した.本報では,これまでに我々が取り組んできたビスマス層状化合物配向セラミックスに関する一連の研究について紹介する.


連載
近代日本のセラミックス産業と科学・技術の発展に尽力した偉人,怪人,異能,努力の人々(35)日本で始めて「セメント製造会社」(小野田セメント製造会社)を創設した笠井順八,中興の祖といわれている安藤豊録　元社長の栄光と苦難の道(1)
■著者
宗宮重行