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マテリアル インテグレーション 2008年5.6月号

マテリアル インテグレーション 2008年5.6月号

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特集 化学センサの新展開(第1章/ガスセンサ・第2章/バイオセンサ・イオンセンサ)

巻頭言
特集にあたって
化学センサ研究会会長(九州大学産学連携センター) 三浦 則雄
社団法人電気化学会の化学センサ研究会は,九州大学の故清山哲郎先生らが中心となって,前身のセンサ研究懇談会(1977年発足)を発展させて1984年に設立され,今年で24年目を迎えます.現在,本研究会は法人会員約40社,個人会員約300名を抱えており,年6回の機関誌「Chemical Sensors」の発行,年各2回の研究発表会及び研究会の開催,各賞の授与,各種国内・国際学会の共催,協賛,支援などを行っています.今年度は特別にこの出版事業を加えております.
物理的現象を扱う物理センサに対して,化学的現象を伴うすべての検知素子(バイオセンサも含む)を対象として,包括的に化学センサ (Chemical Sensor) という呼称がつけられた後,世界的にこの呼称が認知され始めたのは,1983年に福岡で開催された第1回化学センサ国際会議 (IMCS) 以降と思われます.その後,この会議は,アジア,欧州,アメリカ地区の順で2年毎に開催され,今年は7月に米国のオハイオ州コロンバスで第12回が開催されます.
化学センサに関する書籍は,故清山先生らが1982年に講談社サイエンティフィックより「化学センサー:その基礎と応用」を発刊されたのが最初です.この本は,今では化学センサ研究のバイブル的な存在になっています.また,同年には「電気化学と工業物理化学」誌の第50巻第1号に化学センサの特集号として,当時の第一線の化学センサ研究者による13件の解説記事と8件の論文が掲載されています.前者の本の目次を見ると,ガスセンサー,固体電解質センサー,生物電気化学センサーに分かれており,当時はセンサではなくセンサーとのばしていたこと,東工大の相澤益男先生がこの直後に使われ始めたバイオセンサという表記はまだここにはなかったこと,固体電解質センサの比率が高かったことなどが分かります.
その後,四半世紀を経て今回の特集号の発刊となるわけですが,その間に化学センサの分野は大きな発展を遂げています.特にバイオセンサの分野では別の国際会議が開催され,国際専門誌も発行されています.今回の目次を見ましても,医療用や生化学用などの多種多様な新規のバイオセンサが紹介されていることがわかりますし,マイクロ分析システム ($\mu$TAS) を組み込んだバイオ・イオンセンサの発展も著しいものがあります.一方,ガスセンサについては,安心・安全向け,車載用,環境計測用,アメニティ用などの新規分野での展開が見られますし,ナノ化材料技術やMEMS技術の進展に伴った省電力型素子やパターン認識方式のマイクロアレイの出現も特筆すべきでしょう.
今回の執筆陣は,化学センサ研究会の役員を中心として,総勢約60名にお願いしており,本研究会の総力を挙げての執筆態勢をとっています.また,ガスセンサ分野とバイオ・イオンセンサ分野がほぼ半々であり,それぞれの応用事例についても何名かの企業の方に執筆していただき,全体的によくバランスのとれた構成となっています.内容的にも単なる解説ではなく,最近の各分野のトピックスを中心に執筆していただいており,最新かつ最先端の内容を知ることができます.
この特集号の発刊およびその単行本の発刊には,本研究会の学術交流基金をあてることが役員会,総会において認められております.また,単行本の発行後には,本研究会の会員全員に配布するとともに,比較的安価な書籍として販売する計画です.昨今の非常に高価な解説本とは異なり,豊富でかつ最新の内容でありながらも,若手研究者や学生諸君にも入手しやすいように配慮する予定です.この一冊が,化学センサ研究の今後の活性化や進展に大いに寄与するとともに,社会に対する有益な情報発信や若い人の教育に役立つことを願っています.
最後に,本特集号を企画するに当たり, 絶大なるご協力を頂きました兵庫県立大学の水谷文雄教授,長崎大学の清水康博教授,(株)ティー・アイ・シィーの津田直樹社長と松田美佐子様に深謝いたします.

第1章 第1節 半導体ガスセンサ

酸化物半導体を用いた環境モニタリング用ガスセンサ
■著者
愛媛大学大学院 理工学研究科 定岡 芳彦

■要約
本稿では,ガスセンサの基礎となるガスと固体表面との相互作用および電荷移動について概説し,ガスセンサの設計における留意点ならびにオゾンガスセンサの必要性を述べます.


半導体ガスセンサの電極マイクロ設計による高感度化
■著者
立命館大学 生命科学部応用化学科 教授 玉置 純

■要約
半導体ガスセンサにおいて抵抗測定用の電極ギャップを感ガス体である酸化物粒子レベルに小さくしていくと,測定系によっては感度が増大する(マイクロギャップ効果).大きな効果が得られるのはNO2やCl2などの酸化性ガスとキシレンを検知する場合である.これは電極-酸化物界面の感度が酸化物粒界の感度より著しく大きいためであり,界面を増加させる電極マイクロ設計により高感度ガスセンサを構築できる.一方,H2S,CO,C3H8検知では効果はそれほど大きくない.


ナノ構造制御した半導体ガスセンサ
■著者
九州大学大学院総合理工学研究院 島ノ江 憲剛

■要約
近年,各種環境汚染ガス,揮発性有機化合物 (VOCs) ,有機ガス,におい(悪臭)ガスなどのppb〜数ppmレベルで存在するガスのセンサ計測の重要性が高まっている.これらの計測には,半導体ガスセンサの感度を現行より飛躍的に向上させる必要があるが,最近の研究によりこれが達成できる可能性が高まっている.従来の半導体ガスセンサは,ガスと酸化物の吸着酸素(あるいは表面酸素)との反応の結果,酸化物粒子間の粒界ポテンシャルが変化して電気抵抗が変わることを利用している.またセンサのガス感度(空気中とガス中での電気抵抗の比)の向上には,(1) 酸化物粒子表面にPdなどの活性の高い成分を分散すると電子的あるいは化学的な機構により感度が飛躍的に向上する増感効果,(2) 粒子径と空間電荷層厚みとの比が2以下になると感度が急上昇する酸化物一次粒子径効果,(3) ガスが多孔質感応体のすみずみまで到達できるような高次構造にすれば感度が格段に向上する感応体利用率の有用性,が重要であることが知られている.ここでは,これら3つの制御因子について概説する.


メソ・マクロポーラス材料を利用した半導体ガスセンサ
■著者
長崎大学工学部材料工学科 兵頭健生 他

■要約
われわれは,ボトムアップ的な調製技術をガスセンサの材料設計に適用し,そのセンサ特性の改良に取り組んでいる.本稿では,その一端を紹介する.


層状有機無機ハイブリッド材料を用いたVOCセンサ
■著者
独立行政法人 産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 伊藤 敏雄 他

■要約
有機/MoO3ハイブリッドによる揮発性有機化合物(VOC)センサは,ガスセンサとして必要な信号変換機能と分子認識機能を,それぞれMoO3とその層間の有機化合物に分担させることで,高い選択性と感度を有する新しいセンサ材料群です.その中でも,有機/MoO3ハイブリッドは,特にアルデヒド系のガスに対して選択的に応答することを見いだしております.本文では,有機/MoO3ハイブリッド薄膜の作製法,ガスセンサとしての高感度化の手法,ガス種選択性のメカニズムを中心に紹介します.


有機半導体薄膜を用いたNOxセンサ
■著者
静岡大学 電子工学研究所 村上 健司

■要約
ここでは,金属フタロシアニン有機半導体薄膜を利用したNO2ガスセンサについて,私たちのグループの研究を中心に紹介します.


半導体式ガスセンサの信頼性の向上
■著者
新コスモス電機(株) 皆越 知世 他

■要約
ガス漏れ警報器にとって漏えいガスを確実に検知し,それを知らせることは最も重要な性能ですが,同時に、漏えい以外での警報(誤報)が無いことも同じように重要な性能です.我々は,金属酸化物半導体式センサのガス選択性を長期間にわたって維持させるために,高い性能と耐久性を有した材料の検討を行っています.本報では,我々の取り組みについて紹介します.


第1章 第2節 固体電体質ガスセンサ
車載用および環境計測用ジルコニアガスセンサ
■著者
九州大学 産学連携センター 三浦 則雄 他

■要約
車載用および環境計測用という観点から,上記の3つの検出方式のジルコニアガスセンサ,および新規固体参照極を用いたプレナー型酸素センサについて,筆者らの最近の代表的な成果を紹介します.


3価イオン伝導性固体を用いたガスセンサ
■著者
大阪大学大学院工学研究科 助教授 田村 真治 他

■要約
本稿では,固体電解質に筆者らが世界で初めて開発に成功した「3価カチオン」が伝導する固体電解質をキーマテリアルに用いたガスセンサを紹介する.


NASICONを用いたガスセンサ
■著者
九州工業大学工学部物質工学科 教授 清水 陽一

■要約
本項で取り上げるNASICON (Na3Zr2Si2PO12:Na+導電体) 系センサは,NASICONが低温でも比較的高いNa+導電性を示すこと,高い化学的安定性を有すること,またその作製法が比較的容易なことから,固体電解質材料として特に注目されると言えます.また,特に,近年環境汚染物質として関心の高いNOx, CO2, SOxなどの含酸素系ガスの検出には,後述するように含酸素塩とカチオン導電体の組み合わせが有用であり,NASICONをベースとした種々のセンサが,かなり優れた特性と応用性を発揮しつつあることから注目されています.特に,NASICON系センサは,研究開発の例が多く,測定手法としての学術的意義も大きいと言えます.そこで,本項では,NASICONを基本骨格とする固体電解質ガスセンサデバイスについてその原理と特性について解説します.


新規固体電解質を用いた電流検出型ガスセンサ
■著者
九州大学大学院工学研究院 応用化学部門 石原 達己

■要約
本稿では,現在,筆者が開発を行っている新規電解質であるLaGaO3系酸化物を利用した電流検出型のNO,炭化水素,およびH2Sセンサについて紹介する.


固体電解質を用いた炭酸ガスセンサの安定化
■著者
愛媛大学 大学院理工学研究科 物質生命工学専攻 青野 宏通 他

■要約
本稿では,ドリフトを起こさせないために筆者らが試みた ・ゾル--ゲル法によるNASICONの作製 ・希土類オキシ炭酸塩を補助相に用いることによる安定化 ・固体電解質の安定化 について述べます.


ジルコニア固体電解質のセンサ応用
■著者
日本特殊陶業株式会社 常務取締役 知的財産部 品質保証部担当 八木 秀明

■要約
ここでは,特に高温の他のセンサ材料では使用できない分野で耐環境性,耐久性において優れた材料であるジルコニア固体電解質を利用した濃淡電池式酸素センサを始めとして,同材料の積層技術を使って小型で標準ガスを必要としない限界電流式酸素センサについて述べます.その応用として,高温用水蒸気センサ,濃淡電池式と限界電流式の両方の検出原理を駆使し,更に規制強化が進むガソリンエンジンのエミッション対策としての検出端であるリニア酸素センサ,今後省燃費が期待されるディーゼルエンジンで厳しい規制制御に貢献するNOxセンサを紹介します.


電気化学式COおよびCO2センサ
■著者
フィガロ技研(株)センサ開発部 兼安 一成

■要約
我々は電解質に新規アルカリ性液体を用いた電気化学式COセンサ (TGS5042) を開発することにより,液漏れのリスクを最小限に抑え,幅広い使用温度環境への適応を可能にしました.


第1章 第3節 各種原理に基づくガスセンサおよびマイクロセンサシステム
吸着燃焼式マイクロガスセンサ
■著者
長崎大学工学部 江頭 誠 他

■要約
本稿では,著者らが開発を進めてきた吸着燃焼式マイクロガスセンサの原理とそのVOC検知への応用について述べることにする.


マイクロガスセンサ素子上への燃焼触媒集積化
■著者
独立行政法人 産業技術総合研究所 西堀 麻衣子 他

■要約
マイクロ熱電デバイス上にセラミックス触媒パターンを集積化したマイクロ熱電式ガスセンサは,可燃性ガスを触媒燃焼させその発熱を利用してガスを検知する.本稿では、デバイス上への触媒集積化技術とともに,デバイスの耐久性やガスセンサ応用に向けた選択性の向上に関する開発について紹介する.


エレクトロニックノーズシステム
■著者
金沢工業大学 高度材料科学研究開発センター 南戸 秀仁

■要約
ニオイやガスを認識・検知できるセンサのことを人間の鼻にちなんで人工電子鼻システム,すなわちエレクトロニックノーズシステムと呼び,数年前からe-Noseシステムに関する国際会議ISOENが開催されるようになるとともに,e-Noseシステムに関する著書も出版されるようになってきた.e-Noseシステムは,基本的にはニオイやガスを検知するためのケモセンサアレイ(人間の鼻に相当)とセンサの出力を解析するためのコンピューター(脳に相当)からなっており,その開発が活発化してきている.また,一部,ヨーロッパのベンチャー企業を中心に開発されたe-Noseシステム(性能的にはまだまだ)を用いた応用研究も増加して来ている・・・


陽極酸化薄膜を用いたガスセンサ
■著者
長崎大学工学部 教授 清水 康博 他

■要約
本稿では,ガスセンサの分野では特殊な製膜法に分類される金属板の陽極酸化膜を用いたガスセンサの作製法とそのガス応答特性について紹介する.


ガスセンサのマイクロ化・集積化
■著者
東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授 原 和裕

■要約
ガスセンサのマイクロ化とは,ガスセンサをμmのスケールで測られるサイズに微細化することです.また,ガスセンサの集積化とは,複数のガスセンサ,あるいは,他の種類のセンサや電子回路とを,単一のデバイスとして統合することです.両者とも,半導体集積回路 (IC) の製造で培われた技術を応用することにより,小型・軽量化,量産化,他の電子部品や回路との一体化による機能向上等の数多くのメリットが期待できます.しかし,実際にこれを進めようとすると,多くの困難に突き当たります.本節では,そのメリットのみならず,解決すべき課題を述べます.


高温動作が可能な電界効果型ガスセンサ
■著者
石巻専修大学 理工学部 教授 中込 真二

■要約
始めに,電界効果型ガスセンサについて説明します.電界効果型ガスセンサは,Lundstrらが1975年に電界効果トランジスタのゲートにPdを用いることによって,ソース・ドレイン間の電流--電圧特性の飽和電流値が雰囲気の水素ガス濃度に応じて変化するセンサを発表したことに始まります.


高分子材料を用いたQCMガスセンサ
■著者
愛媛大学大学院理工学研究科 物質生命工学専攻応用化学コース 准教授 松口 正信

■要約
本稿では,これまでにわれわれが取り組んできた様々な官能基を有する高分子検知膜の合成と,それらの材料の構造とガス検知特性との関係について紹介します.


第1章 第4節 ガスセンサの応用
高性能湿度センサとガスセンサの開発と今後の展望
■著者
株式会社 山武 研究開発本部 主席研究員 黒岩 孝朗

■要約
ここでは,湿度センサとガスセンサの最新の状況と今後の展望について紹介します.


固体電気化学式センサを用いた換気警報器の開発
■著者
矢崎総業株式会社 永井 清治

■要約
最近,「ガスは危ない」と言われるのは,「不完全燃焼によるCO中毒」と言う事故事例に認識が変わってきています. また一般に使用されるガスは,万が一に備えて着臭してありますが,「不完全燃焼により発生したCOガス」は着臭が出来ないため,人間の鼻では危険を嗅ぎ分けることができません.そのため人間の鼻に代わる「COガスのセンサ」が必要となっています. 世の中は,環境と共に「安全性と安心」は社会的なキーワードであり,とりわけガスエネルギー業界に於いては,「CO中毒の事故防止」は最重要課題であります. そのためには,ガス燃焼(石油)機器よりCOが発生した場合には,使用者に即座にお知らせし,事故を回避する行動を促すことが有効となります. 特に業務用厨房におけるCO事故防止は急務であり,「固体電気化学式COセンサ」を用いた「電池駆動式CO警報器(業務用換気警報器)」を開発しましたので,ここに紹介します.


ガスセンサを用いた植物機能の評価法
■著者
金沢星稜大学 経営戦略研究科 大薮 多可志

■要約
著者らはガスセンサを用いてチャンバー内における植物の空気汚染物浄化過程を連続的に計測するシステムを作製し,ガスセンサ出力より浄化能力評価を行ないました.各種のシックハウス症候群の原因物質に対する植物と杉炭の空気浄化能力評価および室温や照度が浄化能力に与える影響について調べた結果について述べます.また,植物を実環境に設置した効果についても紹介します.


ナノ孔ガラスを用いた大気環境物質の高感度検出
■著者
金沢星稜大学 経営戦略研究科 内山 政弘 他

■要約
現在,大気汚染質は大気測定局に設置された様々な機器により測定されています.例えば,GC (非メタン炭化水素) , GC-MS (揮発性有機物) , 紫外線吸収法 (O3) ,化学発光法 (NO) などです.大気監視局の設置地点や設置数については色々と議論がされてきましたが,今なお大気汚染が激しい状況にある都市域での測定局の数や測定地点の代表性については未解決の問題です・・・


半導体ガスセンサの計測器への応用
■著者
エフアイエス株式会社 開発部マネージャー 花田真理子 他

■要約
本稿では半導体ガスセンサを計測器に応用した事例として,環境空気中の微量ガスや人体が発生する微量ガスを計測するために,高感度半導体ガスセンサを検知器に用いた簡易型ガスクロマトグラフ (SGC) を紹介します.


電気化学式ガスセンサの最近の応用
■著者
理研計器株式会社 今屋 浩志 他

■要約
近年,塩基性ガスであるアンモニアやモノメチルアミン,ジメチルアミンなどのアミン系ガスが,多岐な工業分野において使用されている. 地球環境問題への積極的な取り組みにより,オゾン層の破壊の原因ガスであるフロンは規制により,多くの冷凍機器がフロンガスからNH3へ置き換わっている.また,アミン系ガスは,半導体製造工程においてシリコン等の薄膜形成をする際に用いられるCVD法の原料ガスとして多く使用されている・・・


都市ガス業界におけるガスセンサ技術の現状と課題
■著者
大阪ガス株式会社 エネルギー技術研究所 マネジャー  大西 久男

■要約
ガスセンサ技術は,都市ガスの安全・安心を支える重要な役割を担っています.都市ガス警報器に搭載され実用化されている半導体ガスセンサには,一般的に定説とされているガス検知機構モデルが当てはまらず,独自の取組みにより電気伝導度変化機構や表面反応機構が解明されています.これまで,誤報抑制のための選択性の向上や,不完全燃焼警報機能等を加え都市ガス警報器の多機能化などを図るための技術開発が行われてきました.次世代の都市ガス警報器用ガスセンサには,長期電池駆動を実現とする抜本的な省電力化と多様な設置環境における長期信頼性の確立が望まれており,新しい素子化技術,新規検知方式の導入,設置環境の多様化への対応,長期信頼性確立をスピードアップするための長期的特性変動要因の解明と加速評価手法の開発が望まれています.


第2章 第1節 酵素センサ・免疫センサ・イオアンセンサ
バイオセンサの高感度化と化学増幅
■著者
兵庫県立大学大学院物質理学研究科 水谷 文雄

■要約
センサにとって対象物質をどのような濃度範囲で測定し得るかは,最重要の性能の一つである.必要とされる濃度範囲をカバーすることができなければセンサとしての実用価値は事実上,皆無となる.言うまでもないが目的とする試料を濃縮するか,あるいは希釈することで,より広い濃度範囲をカバーするセンサシステムを構築することは可能である.しかし,試料バルクの濃縮には時間,コストを要する.一方,希釈は自動化されたシステムでは容易だが,試料と希釈液との正確な秤量を必要とすることからSMBG(血糖自己管理)用グルコースセンサや尿糖センサなどの簡便なシステムでは困難を伴う.また,体内埋め込み型グルコースセンサにおいても,無希釈での測定が必要となる.


カロリメトリックバイオセンサ
■著者
神奈川工科大学 工学部 応用化学科 教授 佐藤 生男

■要約
酵素電極の創案から数年後に,熱量測定に基づく各種バイオセンサが考案された.中でも,「酵素サーミスタ (Enzyme Thermistor) 」と命名された,フロインジェクション形式 (Flow injection type) のセンサシステムは,長足の進歩を成し遂げ,ミニタイプからデスクトップタイプまで試作,市販されるようになっている. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) が実験室における汎用研究機器として1980年代以降,普及したように,識別素子としての微小な検出カラムを適宜,交換するだけでThermal flow bioanalyzerとして,利用可能になった.ここでは原理から計測システム,応用にいたるまで筆者らの研究成果も含めて解説する.


酵素ミセル膜を用いるバイオセンサ
■著者
埼玉工業大学大学院工学研究科 物質科学工学専攻 内山 俊一 他

■要約
ポリマレイミドスチレンという脂溶性ポリマーがマレイミド基を通じて酵素のアミノ基やチオール基と共有結合する現象を利用すると,酵素の集合体をポリスチレン膜内にミセルの状態で分散固定できる.この酵素ミセルの内部の酵素は物理的及び化学的な相互作用を受けないで集合していると考えられるので極めて長寿命な酵素センサーの作成が可能となる. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) が実験室における汎用研究機器として1980年代以降,普及したように,識別素子としての微小な検出カラムを適宜,交換するだけでThermal flow bioanalyzerとして,利用可能になった.ここでは原理から計測システム,応用にいたるまで筆者らの研究成果も含めて解説する.


修飾酵素のバイオセンサへの適用
■著者
産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 矢吹 聡一

■要約
酵素の化学修飾を行い,新たな機能を付与した化学修飾酵素を作製した.その修飾酵素を用い,バイオセンサを作製することで,高機能なバイオセンサが得られる.本稿では,我々の研究例より,どのような高機能センサが得られるかについて概説する.


免疫センサチップ
■著者
(独)産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 研究員 栗田 僚二

■要約
血液や尿中に含まれる疾病マーカーを迅速かつ簡便に計測する需要が高まっている.我々は、表面プラズモン共鳴法や電気化学測定法を用いて,心疾患マーカーとして注目される脳性ナトリウム利尿ペプチドや,腫瘍マーカーとして知られる前立腺特異抗原を検出可能な免疫センサチップの研究開発を行っている.本文では,我々の研究開発を中心に,これらの開発状況について述べる.


SPR免疫センサ
■著者
オムロン株式会社 技術本部 コアテクノロジーセンタ 岩坂 博之 他

■要約
1970年代の後半より半導体プロセスを使った微細構造デバイスとして「マイクロマシン」の研究が行われました.MEMSの名称は1987年に米国の電気学会で最初に会合が開催された時の名称がMEMS (Micro Electro Mechanical System) であり,この会合以降,MEMSとして定着したといわれています.一方,分析用の微細構造デバイスとして1979年にStanford UniversityのS. C. TerryらがガスグロマトグラフィーシステムをSiウエハー上に作成したものが始まりといわれており,今日のラボオンチップ (Lab on Chip) やμTASといわれる研究分野もかなり早い時期からそのコンセプトが提案されていました.そして今日DNAマイクロアレイチップや電気泳動マイクロチップなどバイオチップが実用化され,これらに様々な半導体技術が活用されている事は周知の事実です.今後もMEMSに活用されている技術が検出・分析デバイスとしてさらに実用展開される可能性は高いと思われます.


イオンセンサ:無機から有機イオンへ
■著者
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)教授  勝 孝

■要約
本稿では,どのような考えに基づいてセンサ膜材料の開発を進めていったのか,研究の目的も示しながら紹介していきたいと思います.


イオンセンサの流れ系への応用
■著者
芝浦工業大学工学部応用化学科  正留 隆 他

■要約
ここでは, FIAを用いる電位検出型イオンセンサのμ-TASの検出器への応用について著者らの最近の研究例を中心に紹介する.また簡便なマイクロチップ作製法を提案し,アンモニウムイオンISFETセンサおよび陰イオン性および陽イオン性界面活性剤ISFETセンサを組み込んだポリスチレン製のマイクロチップを開発している.以下に,マイクロチップの作製法とその性能について述べる.


半導体化学イメージセンサによるイオン分布の可視化
■著者
東北大学大学院 医工学研究科  吉信 達夫

■要約
本稿では,LAPSをベースとした半導体化学イメージセンサについて紹介します.なお,化学物質のイメージングを行うセンサとしてはこのほかにISFETアレイや,CMOSイメージセンサをベースとしたデバイスも提案されており,今後の進展が期待されます.


第2章 第2節 細胞センシング・マイクロシステム
細胞機能を利用するマイクロバイオセンサ
■著者
東北大学大学院環境科学研究科  井上(安田)久美 他

■要約
本項では,細胞バイオセンサの概要を述べ,細胞を利用するセンシングの特徴と現状技術,および将来の可能性を紹介する.本稿は,細胞バイオセンサの専門家ではない読者を想定しているので,細胞バイオセンサのイメージが分かるように用途を紹介し,その後,検出技術の説明を行う.また,検出技術の事例として,我々の研究を紹介するので,興味を持っていただければ幸いである.


藻類細胞を用いたバイオセンサによる多角的センシング
■著者
東京大学生産技術研究所 立間 徹 他

■要約
藻類の種々の活性を測定することにより,有害物質のセンシングが可能である.また,複数の藻類の光合成活性を測定したり,あるいは鞭毛藻類の遊泳活性,反重力走性,走光性を測定することにより,多角的なセンシングが可能になる.


細胞チップのためのバイオセンサ技術
■著者
富山大学大学院 理工学研究部 鈴木 正康

■要約
筆者らは細胞マイクロアレイチップのためのバイオセンサ技術の開発に取り組んできました.直径10μmという極めて微小な領域でのセンシングですので国内外での研究例もほとんどなく,非常に高度な技術が要求されまだ完成されたとは言い難い水準にありますが,その現状をここでは紹介させて頂こうと思います.


単一細胞工学のセンシング技術への展開
■著者
東京農工大学 大学院工学府 生命工学専攻 教授 松岡 英明 他

■要約
培養ディッシュ内の各細胞の座標を高精度で登録しておくことによって,これらの細胞へのフェムトインジェクションが高効率にできるようになりました.遺伝子や薬剤等の導入量もある程度,定量的に制御できるようになって,単一細胞インジェクトアッセイの可能性が示されています.創薬やレギュラトリーサイエンスなどへの応用が期待される新しいセンシング技術です.


ナノデバイスによるバイオセンシング
■著者
(独)産業技術総合研究所 健康工学研究センター 副センター長  分子科学研究所 客員教授 馬場 嘉信

■要約
本稿では,ナノデバイスによるバイオセンシング技術の最新動向について,我々の研究成果を中心に解説する.特に,超微細加工技術により開発されたナノデバイスにおけるDNAの高感度検出を目指したバイオセンシングに関する研究および量子ドットによるタンパク質・siRNA高感度検出および細胞センシングに関する研究について紹介する.


細胞操作・センシングのためのバイオリソグラフィー
■著者
東北大学工学研究科 バイオロボティクス専攻 教授 西澤 松彦

■要約
我々は,上述の背景に基づき,生体分子や細胞の自己組織化を誘発・誘導する独自の界面技術を創出し,各種バイオニックデバイスの性能向上や低侵襲化に取り組んでいます.本稿では,タンパク質や細胞を思い通りに配置する電気化学的バイオ操作技術の開発と,オンデマンド型バイオセンサへの応用,および,導電性高分子による神経系細胞と微小電極との機能融合,などを紹介します.


集積化バイオ・化学センシングシステム
■著者
筑波大学大学院数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻 鈴木 博章

■要約
マイクロ化学センサの研究の流れの中で,センサの微小流路への組み込み,あるいはセンサと周辺回路との集積化等は既に多数報告されている.しかし,そこから一歩進め,例えば送液制御等の機能も組み込んだデバイスは,現在でも報告例は少ない.化学センサの微小化・集積化を進める上で,電気化学的原理は有利であるが,これは送液機構その他の構成要素についても言える.ここでは,電気化学的原理を利用した最近のマイクロシステムについて述べる.


電気化学検出集積型マイクロ流体デバイス
■著者
(独)産業技術総合研究所 健康工学研究センター 脇田 慎一 他

■要約
本稿では,電気化学検出電極をオンチップ化したマイクロ電気泳動チップの研究開発について紹介します.具体的には,環境水中に含まれる魚類の外因性内分泌攪乱化学物質いわゆる環境ホルモンであるフェノール物質の分離分析チップの基盤的な研究成果を紹介したい.


第2章 第3節 バイオセンサ材料・作製法・検出法
交互累積法によるナノ薄膜およびナノカプセルを用いたバイオセンサ
■著者
東北大学大学院薬学研究科 王 保珍 他

■要約
近年,バイオセンサの高性能化のために種々のナノ材料や生物材料とその新しい製造方法が提案されています.また,これらの新しい材料の特性を用いて作製されたバイオセンサによる新しい検出方法も研究が進んでいます.バイオセンサにおける材料開発と検出法は相互に影響しあいながら急速に進展しています.本節では,これらの新規材料や新検出方法の進展に焦点をあてて,それらがバイオセンサの高性能化にどのように貢献しているかという視点から最先端の研究例を紹介します.


レドックス活性ポリエチレンオキシドを用いたバイオインターフェースの構築
■著者
芝浦工業大学工学部応用化学科 准教授 今林 慎一郎 他

■要約
メディエーターを酵素分子に固定することは触媒活性と直接ET活性を併せ持つ新しい酵素ハイブリッドの創製につながり,メディエーターレス化やその分子機能を有効に利用した化学情報・エネルギー変換システムの構築を可能にします.我々は,酸化還元酵素であるグルコースオキシダーゼ (GOx) の表面アミノ酸残基にポリエチレンオキシド (PEO) 鎖をスペーサーとしてメディエーター分子フェノチアジン (PT) を修飾することによって,触媒活性と直接ET活性を併せ持つGOxハイブリッドを新規に合成しました.長鎖の柔軟かつ親水性のPEO鎖をスペーサーとして利用することで補酵素フラビンアデニンジヌクレオチド (FAD) と電極間の迅速なETを実現できました.以下,GOxハイブリッドのET特性を中心に関連する研究成果を紹介いたします.


ウイルス1粒子の超高感度計測に向けて
■著者
県立広島大学生命感極学部環境科学科 江頭 直義 他

■要約
本稿では筆者らの独自的な研究により,ウイルス1粒子の超高感度計測に曙光が見えてきたので,その手法と結果を紹介したい.


リアクター型バイオセンサ
■著者
県立広島大学生命感極学部環境科学科 飯田 泰広

■要約
本稿では,一般的な基質を測るセンサではなく,著者らが行ってきている酵素スイッチング機構を指標としたバイオセンサを題材にする.これは,酵素活性を可逆的にON/OFF制御することに基づいており,阻害することによりその活性を消失させた後の回復を評価することにより情報を得るセンシングである.この回復を指標とした,新たな酵素阻害剤探索への適応や,コファクターセンシングなどを中心に,その他リアクター型バイオセンサの高機能化の試みについて報告する.


分子インプリント高分子の「ゲート効果」を利用したバイオミメティックセンサ
■著者
県立広島大学生命感極学部環境科学科 吉見 靖男

■要約
筆者は酵素に変わって分子を認識するセンサ用の素子を開発する必要があると考えました.(もっとも,研究を初めたころは,酵素や抗体を買うだけの研究費がなかったという,即物的な理由もあります.それらに比べるとモノマーは格段に安価だから低コストで研究できるだろうと思っていました.ところが,実際研究してみると意外とそうでもなかったのですが.)そこで,分子認識能を担持された合成高分子である分子インプリント高分子に目をつけました.


ケミカルCCDを用いるバイオエレクトロニクスセンサの開発
■著者
富山大学大学院 理工学研究部 生命・情報・システム学域 教授 篠原 寛明

■要約
著者らは,このC-CCDを用いたバイオセンサ開発の共同研究の過程でAu薄膜をコートしたC-CCDのゲート部が酸化還元物質に鋭敏な応答を示すことを見出した.すなわち,Auゲート型C-CCDが新規な酸化還元物質センサとして応用可能であろうと期待するに至った.従来,溶液中の酸化還元物質の検出定量には,酸化還元物質を含む溶液中で電極電位を測定するポテンシオメトリー法あるいは電位印加時の酸化還元電流を測るアンペロメトリー法があるが,ポテンシオメトリー法は測定系が簡単であるが,一般に不安定であり精度が悪いという課題がある.またアンペロメトリー法は,感度は高いが外部電源の必要性や回路構成からマルチ化が難しいなどの問題点があった.Auゲート型C-CCDは,Auゲートと酸化還元物質の電子授受平衡に基づくポテンシオメトリック型と言えるが,電位変化を直接測るのでなく,CCDの原理を利用して蓄積電荷量として測定するため,精度および感度が向上する.さらにAuゲート型C-CCDの酸化還元物質応答能を利用すれば,電子メディエーターを介して間接的に,あるいは直接的に酸化還元酵素とAuゲート基板との電子授受平衡を計測し,酵素反応を,しいては酵素基質を感度よく検出,定量することが可能であると期待した.


第2章 第4節 バイオセンサの応用
酵素・電気化学式血糖センサシステムの開発
■著者
松下電器産業株式会社 バイオ技術開発室 チームリーダー・工学博士 中南 貴裕

■要約
糖尿病における血糖値管理のためのセンサシステムの開発について述べる.信頼性の高い血糖値測定が患者自身により実施できるよう,高精度測定と簡易操作を両立するセンサシステムの開発を行った.


デジタル尿糖計の開発と糖尿病予防への応用
■著者
株式会社タニタ バイオヘルスケア推進部 伊藤 成史

■要約
世界糖尿病連合 (IDF) は2007年4月に開催された前糖尿病とメタボリックシンドロームの国際会議において,糖尿病予防への取り組みが人類の課題であるとの声明を発表した.2007年の世界の糖尿病患者数は2億4,600万人(有病率6.0{\%}),糖尿病予備軍(IGT:耐糖能異常)3億800万人(有病率7.6%)に急増しており,その対策としては,健康診断や自己検診によって,糖尿病の発症リスクの高い人を見つけだし予防すること.そして,糖尿病予防にまず有効なのが,食事や運動などの生活習慣の改善であると主張している.現在,健康診断などで尿糖の有無は検査されているが,家庭で日常的に尿糖を測定する意義は,一般的には知られていないのが現状である.本稿では,尿糖測定の歴史,尿糖計の技術的課題を通じて,デジタル尿糖計が開発されるに至る経緯を解説し,新しい尿糖計の活用による糖尿病予防への応用ついて述べる.


体内埋込型バイオセンサ
■著者
徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 准教授 安澤 幹人

■要約
体内に存在する生化学物質の濃度やその変化を知ることは,種々疾患の発見や予防,治療に有用であることから,体内および体液の生化学物質の濃度測定が可能なバイオセンサの開発が盛んに行われている.なかでも血糖値は,糖尿病の診断,治療,および健康管理に有効かつ重要な情報を提供してくれることから,血糖測定を行う様々なグルコースセンサが研究開発されている.現在,行われている血糖測定の大多数は,採血した後に使い捨て型血糖センサを用いて測定する方法であるが,1999年に米国で生体内に留置し連続測定が可能な体内埋込型グルコースセンサ Minimed CGMSの臨床応用が開始されて以降,逆イオントフォレシス を用いて体液を皮膚表面に漏出させて測定するグルコウォッチ ,酵素を使わず近赤外分光法等を用いた非侵襲型のOrSense NBM-200Gやマイクロダイアリシス法を用いたMenarini Glucoday S等,血糖値の連続測定が可能なシステムが開発されており,今後は使い捨て型血糖センサに置き換わり,糖尿病患者の血糖測定の主流になると予想される.そこで本稿では,糖尿病患者の治療・健康管理に有用な体内グルコースのリアルタイムモニタリングが可能な体内埋込型グルコースセンサを開発するのに必要な要件・技術・特徴について述べる.


医療福祉用フレキシブル電極・センサ
■著者
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部 生体工学研究室室長 外山 滋

■要約
折り曲げても機能するフレキシブル電極・センサは,生体に適用する医療福祉用デバイスには重要な部材である.ここでは、前半で応用例を紹介し,後半では筆者らが実際に行っている電極の作製法について説明する.この方法は,基本的にはパターンの印刷,蒸着,不要部の除去という3段階のみからなる簡単な方法なので,設計から電極の作製まで短時間で行うことが可能である.


電気化学的DNAセンシング
■著者
福井大学大学院 工学研究科 生物応用化学専攻 末 信一朗 他

■要約
我々はすでに耐熱性酵素であるグルコース-6-リン酸脱水素酵素を標識したオリゴヌクレオチドをレポータープローブ,アビジン標識したプローブを電極へのキャプチャープローブとして用いたサンドイッチハイブリダイゼーションによるサルモネラ属菌の電気化学的なDNAセンサを構築した.これは,メディエータを積層した電極基盤上にキャプチャープローブを固定化し,そこに精製した標的DNAと酵素で標識したレポータープローブを加え,標的DNAを一本鎖に変性させ,各プローブとハイブリダイズさせる.その後,基質を加え,酵素反応に基づく酵素-電極間の電子伝達をモニタリングすることでターゲットDNAを検出するといった,高感度,特異的に標的DNAを増幅できる遺伝子工学的利点と,迅速,簡便かつ安全に検出が可能である電気化学的手法の利点を組み合わせたDNAレベルでの電気化学センサである.今回は,より耐熱性の高い超好熱菌アーキア由来色素依存性L--プロリン脱水素酵素を標識酵素として用いたレジオネラ属菌検出を目的としたDNAセンシングシステムへの応用例を紹介する


定質という考え方と新しいセンサ技術
■著者
九州工業大学大学院 生命体工学研究科 教授 春山 哲也

■要約
著者の研究グループでは「定質センシング技術」の研究開発を展開してきました.それらの成果のうち,「物質の特性や構造などの共通性質を検知し,同質の物質を網羅的に検知する」と「対象(ヒト等)が受ける影響から,物質の質を判定する」のそれぞれの研究成果事例について解説します.発
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