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マテリアル インテグレーション 2004年6月号

マテリアル インテグレーション 2004年6月号

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マテリアル インテグレーション 2004年6月号
特集 先端カーボン

総論
■著者
名城大学 理工学部 教授 飯島 澄男

■要約
本特集表題にもなっている先端カーボン材料はその構造から大きく2つに分けることができる.ひとつは,グラファイト,ダイアモンド,アモルファスカーボンの集合状態や結合状態を制御して新しい機能を持たせるようにしたものであり,1980年代にはすでによく知られていたダイヤモンド状アモルファスカーボンやカーボンファイバなどがそれに類する.例えばダイアモンド状アモルファスカーボンは,Si基板上に薄膜として作成することで,その高熱伝導性が電子デバイスの性能向上をもたらす.グラファイト状カーボンを主な構成単位とするカーボンファイバーは,二次電池の電極材料としてもちいることで電池性能を改善できると報告されている.またカーボンファイバーは,機械的強度にも優れているため構造体の補強などに良く使用されている.ふたつめに類する先端カーボン材料は,フラーレンやカーボンナノチューブといった新しく登場してきた炭素の同素体である.フラーレンやナノチューブは,炭素原子配列が高度に組織化されたナノメーターからマイクロメーターの大きさを持った巨大分子である.こうした巨大分子の構成要素は炭素原子1個というよりは,炭素原子6個からなる6員環(ベンゼン環)で,その炭素-炭素間結合はシグマ結合がパイ結合で補強されているため,非常に安定である.また,パイ電子は,6員環が連結してできた網目上を自由に動き回ることができる.網目が無限に広がればグラファイトであり,ただの半金属的性質をしめす層状物質というだけのことであるが,これが巨大分子になると,パイ電子はとたんに多彩な性質と構造をもたらすという魔法を演じる.たとえば,グラファイトシート円筒であるカーボンナノチューブは,その6員環配置の対称性により,金属的な性質を示したり,半導体的な性質を示したりする.直径が1〜2nmの単層カーボンナノチューブの場合は,1本が単独でいることはむずかしく互いに付着し合う傾向が強くロープ状となっている.多層の場合は各カーボンナノチューブが単独でいる場合がほとんどである.パイ電子は,炭素の5個からなる5員環や7個からなる7員環が6員環の網目の中に織り込まれると更に多彩な魔法を展開することとなる.典型的な例がフラーレンで,そのひとつがサッカーボール型C60分子である.6員環20個と5員環12個からなる球状分子は,溶媒に溶かすと赤紫色などの美しく着色した溶液となる.また,C60が規則正しく並んで結晶となったものは,電気的絶縁体である.


フラーレン実用化の最前線
■著者
フロンティアカーボン(株) 開発センター 村山 英樹

■要約
フラーレンは炭素原子のみからなり,中空構造をもったナノサイズの球状「炭素分子」である.現在代表的なナノカーボン材料として,様々な分野における有用な新規材料として期待されている.このような炭素分子の存在は1970年に大澤映二によって理論的に予想され,1985年に星間分子の研究をしていたクロトーとスモーリーらの英米共同研究チームによってその存在が初めて実験的に確認された.フラーレンという名前はフラー・ドームと呼ばれるドーム型の大規模建築を発明したバックミンスター・フラー(建築家)に由来している.発見者のクロトー等が中空かご状構造を提案するに際してインスピレーションを得たことから,フラーレン,あるいはバッキーボールと称されるようになった.ただ1985年のフラーレン発見の時点では質量分析器で同定できる程度の極微小量しか得られておらず,C60がサッカーボール状の球状分子であるという構造仮説が完全に確定されたのは,1990年クレッチマーとハフマンによってフラーレンの人工的合成法(抵抗加熱法,アーク放電法)が見出され,実際にC60を始めとしたフラーレンが物質として取り扱えるようになってからである.実際に合成されるようになった1990年以降,フラーレンを用いた研究が盛んに行われるようになり,球状炭素分子としてその特徴的な性質が次々と明らかになった.溶媒に可溶で,純品に精製できる上に化学修飾が可能であり,これらを原料として従来にない材料が得られることや,あるいは添加剤として用いて従来の材料のさらなる高性能化が可能であることが報告され,様々な用途・分野でその有用性が確認されてきている.そして,2003年からは実際にフラーレンを使用した商品が世に出始め,今後多くの分野・応用用途においてフラーレンが活躍すると期待されている.


カーボンナノチューブ
■著者
本荘ケミカル(株) 技術開発部 稲倉 秀樹

■要約
カーボンナノチューブは炭素からなるグラファイト状のシートが筒状に長く伸びた形状であり,ナノメートルスケールの直径とマイクメートルスケールの長さを持つ.カーボンナノチューブは1991年に筒が同心円上に重なった入れ子構造になっている多層のナノチューブの発見が報告されて以来,いわゆるナノテクノロジーのもっとも有望な素材の一つとして,様々な分野で研究が行われている.その後,単層のナノチューブが合成されるようになり,最近では,2層のものを選択的に合成できるようになっている.本稿ではカーボンナノチューブについて,アーク放電法による合成を中心に紹介する.


カーボンマイクロコイル(CMC)
■著者
岐阜大学工学部応用化学科 元島 栖二

■要約
ナノテクノロジーを支えるナノ材料の中で,フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノホーンなどの新炭素系材料が非常に注目され,多くの研究者により精力的な研究が行われている.著者らは,1989年に世界ではじめてマイクロコイル状窒化ケイ素ファイバー (Si3N4コイル)を,また1990年にはカーボンマイクロコイル (CMC) を気相合成することに成功した.Si3N4コイルやCMCは,コイル径がμmオーダーの3D--へリカル/らせん構造という特異的な構造を持ち,種々の電磁波や波動との高度の相互作用が可能であるので,マイクロ波領域の電磁波吸収材,センサーなど,幅広い応用が期待されている.本稿では,μmからnmオーダーのコイル径を持つカーボンマイクロコイル (CMC) の合成法,モロフォロジー,微細構造,成長メカニズム,特性及び応用について,概略を紹介する.


高機能活性炭
■著者
信州大学 工学部 電気電子工学科 遠藤 守信 ほか

■要約
活性炭とは所定の物質を選択して分離,除去,精製するため,活性化と呼ばれる化学的,物理的な処理を施して吸着効率を高めた多孔性炭素である.活性炭の吸着性能は,表面積の広さと細孔の大きさに関係し,炭化時に多くの細孔と表面積を付与することで吸着性能は高まる.活性化は水蒸気やCO2,空気などで賦活するが,ほかにKOHなどの薬品を使う方法もある.原材料としてはヤシ殻や竹などの植物質のほか,石炭,石油ピッチ,レジンなどが使われる.一般には天然有機物を炭化後に,1100K程度で水蒸気を用いて酸化賦活し,ナノスケールの小さな細孔を多量に有する活性炭を作っている.このように作られた活性炭は天然物の組織構造由来のマイクロおよびナノメートルスケールの細孔をも持っている.天然物をプリカーサーとする活性炭では,均一な細孔構造と機能を高いレベルで保証できないことから,最近では樹脂あるいはピッチなど合成原料から形態や細孔構造を制御した活性炭が作られ,広く使われている.近年,地球の温室効果ガスや環境汚染,安全に係わる様々な問題が顕在化する中,活性炭が注目されている.電気自動車やハイブリット自動車用電源として活性炭電極を用いた電気二重層キャパシタは長寿命かつ使用温度の範囲が広く,安全であるという長所から応用分野がさらに広がりつつある.ここでは,このような活性炭の例として,活性炭素繊維とカーボンアエロジェルを中心に活性炭の細孔の特徴,構造評価,ナノ空間の特徴を中心に紹介する.


カーボンナノホーンの燃料電池への応用
■著者
NEC 基礎・環境研究所 久保 佳実

■要約
本稿では,カーボンナノチューブの一種であるカーボンナノホーンを取り上げ,燃料電池における電極材料への応用について述べる.われわれが注目している燃料電池は,携帯機器用の超小型燃料電池である.モバイル燃料電池が注目される最大の理由は,エネルギー密度の高さにある.モバイル燃料電池のエネルギー密度は,現在主流のリチウムイオン電池の10倍に達する可能性があり,携帯機器の駆動時間を数倍から10倍に引き上げる.これから始まる「モバイル社会」においては「電池問題」が深刻な課題になる.例えば,地上デジタル放送が携帯向け放送を開始すれば,TV付携帯電話の使用時間は一気に延びるであろう.しかし,現在のリチウムイオン電池では,1時間程度の視聴によって電池が切れてしまうのである.この問題を一気に解決する切り札が,燃料電池である.燃料電池の高いエネルギー密度(長時間駆動)と,充電不要(燃料の交換あるいは補充によって使い続けることができる)という特徴が,モバイル社会のニーズに合致する(メタノールの交換や補充であれば,乾電池の買い替えに比べて百分の一のコストで済む).このような強いニーズに裏付けられた「利便性」が,モバイル燃料電池の最大の特長である.これは,従来の燃料電池がエコロジーや省エネ・省資源といった理念先行型であったのとは対照的である.このような理念の実現が人類にとって重要であることはいうまでもないが,それが世の中に受け入れられるためには合理的な経済性が必要であり,この点において,自動車用燃料電池と家庭用燃料電池は非常に大きなハードルを抱えている.それに対して,モバイル用燃料電池の場合には,その大いなる利便性のゆえに高いコストが許容される.そもそも電池というのはエネルギーコストがきわめて高い.一般家庭の電気代はキロワット時当たり20円程度であるが,乾電池の値段は1ワット時のエネルギーしかないにもかかわらず100円以上にもなる.それだけの対価を払ってでも,人々は「モバイル電源」という利便性を求めるのである.モバイル燃料電池は,まさにモバイル社会に不可欠なキーデバイスである.


温度センサーとしてのカーボンナノチューブの応用
■著者
(独)物質・材料研究機構  若手国際研究拠点 センター長 板東 義雄

■要約
バルクのカーボンは半金属で導電体だが,カーボンナノチューブの微細な形状をとると,チューブの径やカイラリティに依存して,半導体や金属の新しい性質を示す.さらに,電界をかけるとチューブ先端から電子が放射したり,あるいはチューブ内に水素を吸蔵したりするなど,バルクな構造では全く見られない様々な新規な特性が発現する.この特性を利用して,電子エミッターとして平面フラットディスプレイパネルに,電極材として燃料電池に,微細細線としてトランジスターに,あるいはコンポジットとして軽量高強度材などへの応用が展開している.我々のグループはGaNのナノチューブの探索研究の過程で,金属ガリウムをチューブ内に包含したカーボンナノチューブがナノスケールの温度計として利用できることを偶然に発見した.温度作用を有するカーボンナノチューブを「カーボンナノ温度計, carbon nanothermometer」と命名した.カーボンナノ温度計は,カーボンナノチューブのチューブ内に包含された金属ガリウム (または金属インジウム)が溶けて液体状態となり,外気の温度変化に対応して膨張・収縮する現象を利用して温度計測を行なおうとするものである.カーボンナノチューブは数十ナノメートルといった微細な形状であることから,温度計のサイズとしては世界で最小であり,ギネスに「世界最小の温度計」として世界レコードに認定されている.従って,カーボンナノ温度計はミクロン以下の微小な空間の温度センターに利用することができる.本稿では,カーボンナノ温度計の合成方法とその温度計としての特徴などについて述べる.また,温度記録の方法や酸化物ナノチューブを用いた新しいナノ温度計の開発さらには実用化の問題点についても述べる.


電気二重層コンデンサへの応用
■著者
NECトーキンセラミクス(株) 堀江 英昭

■要約
活性炭の応用例として,活性炭を電極に使用している電気二重層コンデンサを紹介する.電気二重層コンデンサは,ファラッド単位で表現される大きな静電容量を持ち,大電流放電可能,広い温度範囲で使用可能,充放電サイクル特性や急速充放電にすぐれた特長をもつコンデンサである.電気二重層コンデンサの静電容量はアルミ電解コンデンサと二次電池の中間に位置し,アルミ電解コンデンサの100〜1000分の1の体積で同容量の静電容量(蓄電容量)を持っている .
NECトーキンは,1980年に電気二重層コンデンサ(商品名:スーパーキャパシタ)の製造販売を開始し,現在,年間6000万個以上の生産を行っている.主にマイコン,RAMのバックアップ電源として家電製品やAV機器に用いられており,バックアップの時間や電流の大きさ,および回路基板への実装形態などによりシリーズ化している.


先端カーボンのノイズ抑制シートへの適用
■著者
NECトーキン(株) ファンクショナルデバイス事業本部 磁性デバイス事業部 商品技術部 粟倉 由夫 ほか

■要約
近年,コンピュータをはじめとするデジタル機器の高速化に伴い,放射ノイズレベルの増大による障害やノイズ干渉による誤動作の発生頻度が増加している.また,電子機器の小型化,薄型化,さらにはカメラ付き携帯電話に代表される機能複合が進み,省スペースでかつ効率の高いノイズ対策部品への要望が一段と高くなってきている.これらの市場要求に対し,薄く貼るだけでGHz帯の電磁ノイズを対策できるノイズ抑制シートが製品化され,電磁ノイズ対策における有効な手段として認知されてきている.本稿では上述したノイズ抑制シートの概要とカーボンを含有した導電体層を有することによって,シールド特性と吸収特性の効果を併せ持つことを特長とした多層構造のノイズ抑制シートについて述べる.


高輝度放射光による炭素系薄膜の構造解析
■著者
東北大学大学院理学研究科物理学専攻,CREST-JST 谷垣 勝己 ほか

■要約
半導体を用いたデバイス技術は,1947年Bell研究所のW.H.Brattain,J.Bardeenによる点接合型トランジスタの発明以来,急速に発展してきたが,ここ数年の驚異的なITの進歩により更なる半導体トランジスタの微細加工,集積化が必要になってきている.特に,LSIの構成要素であるSi-MOSFETは,現在,大きさが100nm以下の領域に突入しているが,更なる処理能力の向上には,10nm単位の微細加工技術が必要とされる.一方,炭素系物質に基礎をおく,分子コンピュータ,有機エレクトロニクス,ナノマテリアルサイエンスは,最近になって研究が活発に行われるようになってきた分野である.従来の微細加工である「トップダウン」の方法ではなく,原子や分子1個を1つのデバイスとして使い,コンピュータを組上げるという「ボトムアップ」の手法を用いて作られた構造体の特徴は,自己組織化による集積が可能であるということであり,将来に注目される分野である.現在,既存の無機半導体の代わりに炭素系化合物を用いたデバイスで,有機EL,有機FETなどが精力的に研究されている.これらの炭素物質系デバイスは,無機デバイスとは異なり,軽量で薄く柔軟性に富むなどの利点がある.Si半導体デバイスは大規模な施設が必要になるが,有機デバイスはインクジェットプリント技術が使用できるため,紙にプリントするように大量,簡易に生産できる可能性もあり,産業界からの期待も大きい.期待される炭素系物質には,に示されるフラーレン,カーボンナノチューブ,クラスレートなどがある.特にフラーレン,カーボンナノチューブは炭素の新たな構造として近年盛んに研究されている.このような炭素系ナノ物質を薄膜デバイスとして適用していくためには,基板上での微細構造を正確に把握することが必要である.このために,放射光研究施設における構造解析を利用することは極めて有効と考えられる.ここでは,最近われわれの研究グループが行ったSPring-8における構造解析の最近の実験を中心にその原理と有効性を紹介する.


連載
近代日本のセラミックス産業と科学・技術の発展に尽力した偉人, 怪人, 異能, 努力の人々(9)伊奈一族の伊奈製陶の苦難と成功の道(3)
■著者
宗宮 重行


連載
第2次世界大戦後の日本セラミックスの発達に,友好や親善に尽力した世界の大学教授(7) 日本のエレクトロセラミックスの発達と友好親善に尽力したアメリ

カペンシルバニア州立大学Robert Everest Newnham教授
■著者
宗宮 重行
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